海外育児日記
ダディ!
久しぶりの親子の再会。
息子は前夜から興奮していた。
「パパが明日来るよ。パパがドアを開けて入ってきたら、なんて言う?」
「ダディ!」即答だ。
「なんで、ダディなの? いつもパパって呼んでたじゃない」
「ダディ! ダディ!」真剣な顔で言う。
息子は私のことをいつもママと呼んでいるが、ときおりマミィと呼んだりする。たいてい外で、例えばショッピングセンター内の遊び場や公園で、オーストラリア人の子供たちが多くいる時にマミィと呼ぶ。彼らが母親のことをマミィと呼んでいるのを意識してのことだと思う。だから、パパもダディなのだろう。
うちの子は大人ばかりのなかで生活しているせいか、言葉が他の子供に比べて遅い。兄弟でもいれば、意思伝達の一番早い方法は言葉なのだと知り、今頃は2語3語の言葉の連結でしゃべっているのだろうが、母や私は、単語を一語言ったところで先回りしてしまうせいで、すっかり言葉の発達が遅れてしまった。ただし、体だけは両親に似て背が高く、2歳です、と答えると、いつもびっくりされてしまう。
息子は久しぶりに父親に会って、すっかり興奮したのか、いろいろな言葉を急にしゃべりだした。今まで話さなかった2語以上の言葉で意思を伝達するようになったのだ。その成長ぶりは喜ばしいことなのだが、ふざけて夫や私を名前で呼ぶのには困ってしまった。
さらに、入浴後にタオルで前を隠して歩いてみたり、自分とダディだけチンチンがあると言いだしたりするようになった。自分とダディが一緒であることがすごく嬉しいらしい。おまけに自分はダディに似ているとまで言う。何にでも興味を持ち、触ったり、どこかへ持っていってしまって、何度注意をしても言うことを聞かなかったのに、今では、「それはダディのだから、そこに置いておいてね」と言うだけで、きちんともとの場所に戻すようになった。変れば変るものである。
テレビを見ながらソファで昼寝を楽しむ夫の姿を見た時は大変だった。ものすごい勢いで走って来て、ダディのめんめが変! ダディのめんめが変!を繰り返して、私とばあば(祖母)の手を引っ張ってリビングに連れて行こうとする。息子にとっては一大事だ。遊んでくれるはずのダディが目を閉じて昼寝をしているのだから。私はそんなことを伝えられるようになった我が子にびっくりしてしまった。
毎日毎日大騒ぎしているうちに、あっという間に11日が経ち、夫が台湾へ戻る日がやってきた。息子にはきちんと、ダディは、ダディのダディが病気だから、ダディのダディがいるお家に帰らなければならないことを話して聞かせた。本人も納得して、チャイルドケアセンターに行く前にちゃんと、「しーゆー、ばいばい(See you, bye-bye)」と言って、ダディに何度も何度もキスをして出掛けて行った。
息子にとってはものすごい刺激だったのだろう。今までは、いざ受話器を渡すとそれまでの元気はすっかり影をひそめ、急にシャイになって黙り込んでしまっていたが、あれ以来、受話器に向かって元気に自分の名前を言ってダディの言葉を何やら聞いて、満足してバイバイと言うようになった。以前と変わらないのは、ダディと自分の写っている写真を見るのが大好きだということだ。
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